驚くほど時間が経っていることについて
大学
プルーストはマドレーヌを紅茶につけた時の匂いから、彼が書く物語の世界を構成したという。それって、ものすごい量のマドレーヌを消費したんじゃないかと、僕は思う。想像してほしい。紅茶漬けのマドレーヌ(大量)。想像しただろうか? ちょっとすごいだろう?
細部を詰めようとすればするほど、あなたのお父さんは、マドレーヌをびしょ濡れにする。もう少しで、教会のステンドガラスのマリアさまの小指の爪のガラスの色が思い出せるんだ。ポリ袋いっぱいのマドレーヌ(紅茶に濡れている)。それを毎週三回捨てなきゃいけない。近所の人に見つかったら大変だ。深夜にこっそり、息を詰めて。マドレーヌの焼きすぎと、紅茶の淹れすぎがたたって、あなたのお母さんはおかしくなる。あなたもやがてそうなる。あなたはそれに気が付いているべきだった。
大体の場合、こんな感じの生産性の逓減が、芸術一家の存続というやつを台無しにする。ブリューゲルって奴らはすごいね。
今からするのは、芸術一家の話ではなく、僕にとってのマドレーヌと紅茶の話だ。