いくつか

日記

私は酔っている。異常なことを書いてしまう。私には私が止められない。これだから酒は嫌いだ。私はひどく酔いやすく――じゃあなんで飲むんだよ、キャハハ!――そして狂気はこのときにだけ元気になる。 しかし私は知っている。酒は狂気のカンフル剤であって、狂気の食物でない――よく言ったもんだよ! チャハハ!

続きを読み給え。あなたが十分に準備が出来ているなら。

 私は未だに中学二年生くらいの下ネタが大好きで、それ以上の下ネタには残念ながらついていけない。実際の性欲に対して、私はあまりにも脆弱すぎる。誰それにホテル――この世のホテルには、『休憩』って書いてあるホテルがあるもんな! キャハ!――に誘われただの、どういうナニがどうの、だの。一方で、私はあまりにも知りすぎている。全世界の諸君に聞きたいが、君たちの国家――くそっ、また間違えたぞ、国家には帰属しないだろ――君たちの文化には『百聞は一見に如かず』とだいたい同じ意味の箴言があるだろう? 

 そこで問いたいのだが、千聞なら一見と並ぶだろうか? 一万聞なら? それ以上なら? どこかに一見に如くだけの聞があるだろうか? あるだろう? 君はそれを知っているはずだ。

 あえて言わせてもらうが、私はそれと並ぶほどに耳を肥やしている。さあ挑戦してきてみたまえ、私を辱めて見給え。この世の男娼と売女どもよ。貴様らの経験とやらを存分に語り給え。私はそれに十分対応してみせる。少なくとも努力はする。耳を赤くして、精一杯の声を張って、あなたと対峙してみせる。私の武器は愛想笑いと乾いた同意だ。私のとても長く孤独な相撲の結末をお見せしよう。ゴミ箱に毎週一度だけ(本当に一度だけだ。私はこのルーティンを守っている)自分の愛すべき半数体を――いい言葉じゃんかよ。『自分の愛すべき半数体』。こんなところでもあんたは詩人だね! チャハハ!――棄ててきた男の出した結論をお見せしよう。孤高のオナニストのプライドとやらを見せつけてやろう。私を臆病者と呼ぶなかれ。私を弱者と呼ぶなかれ。蛮勇と呼び給え。ただし言っておこう。この世の男娼と売女ども。私は君たちを蔑みはしない。なにせこの世はフリーセックスであるからね(それにしても、フリーセックスという言葉があるってことは、フリーじゃないセックスがあるってことだね。またお前は使う言葉を間違えたんだよ。しっかり覚えておくからね)。

 なんともまあ、私の狂気は必死に頑張っている。たかが『耳年増』の三文字で済むことを、よくもまあ、あつらえたものだよ。

 くそっ。しかし私の狂気はやっぱり死にかけている。私は自分の言葉に注意しすぎる。酔っているときもだ。くそっ。狂気、君の食料を教えてくれ。私はそれを供給する。狂気、君が徘徊するところに私を連れて行ってくれ。私は自分がどこで降りるかちゃんと知っている。そこがどこかはわからないが、私はそこに着いた時に、ちゃんと分かる準備が出来ている。ガキの使いじゃないんだ。ぜひともそこで、ぜひともその時に、ぜひともそいつに会わなければ行けないというところで――お前はまたロマンチストになっているよ、キヒヒ!――私はちゃんとお前に知らせるつもりだからね。それまでちゃんと生き延びてくれ。お前を餓死させたくはないんだ。

 これらもすべてどうでもいいたわごとだ。

 くそっ。私は未だにこの本当に大切なやつ、いわゆる自尊心というやつを棄てきれない(しかし、自尊心をカネに交換したら、私には何が残るだろうか? うごめく糞袋。やけにリアルじゃないか……)。私はまだ子供心を棄てきれない。あなた達がさっくりと棄ててしまうもの。酒とセックスとカネの名のもとにあっさりと放棄してしまうもの。夏のチューペット(棒アイスと私は呼んでいた)、秋のホットボンドで作られるリース、冬場の校庭に鎮座まします雪だるまたち――私はこれを棄てられない。違うよな? 私はこれらを捨てるのに恐怖を感じている。私はすでに確信が持てなくなっている。私は兌換性を信じない。私が私の子供時代を――今更、が抜けてるぜ――棄てた時に、それに見合っただけの報酬が与えられるのか私には不安でならない。というのも、私の子供時代は、あまりにも私にとって貴重になりすぎている。コンコルドの誤謬。くそっ。私はまた自分をチェックし続けている。

 要するに――ああ、素晴らしい言葉だ。何もかもわかった気分になれる――私の精神は私の肉体にぜんぜん追いついていない。私は時折異常に恐ろしくなる。私はまだ年を取るのだろうか? 三十歳まで年を取るのだろうか? 私は寒気を感じる。私はその時にまで、ちゃんとした人間になれているだろうか? 私にわかるのは、そのときには私の狂気は完全に死んでしまい、単に17歳くらいの精神年齢を持った、30歳の男が残されるということだけだ。私の精神はうまく年を取れない。私はすでに遅れている。私の体が23年間生きているということに、私はなぜだかうまく適応できない。私は……。

 くそっ。寝るんだよ、寝るんだ……明日はおそらくよりよい日になるはずだ……少なくとも、私はそれがよりよい日であったときに、ちゃんとそれがわかるつもりだ。その準備はしているつもりだ。くそっ。結局私は私を貶めている。ほうっておいてくれ。最後に一つだけ言っておくが、自尊心を棄てきれない男にとっては、他人に蔑まれるよりも、自分で自分自身を徹底的に蔑むほうが、ずっと気持ちがいいものだ。夜のベッドで、1人でうずくまりながら、自分を苛むときほど、気持ちがいいことはない。これだけは確かだ。そして、こう思っている人は少なくないのではないか、ということが、私をある程度まで救っている、ということも、あなた達には伝えておきたい。せっかくここまで読んだのだから(いやはや、もしここまで読んだ人間がいたのならば、私は彼/彼女に無償の愛を授けられる自身があるというものだよ)。

 寝るんだよ。